[第2章-6] 意のままに操る

色について知ると、それを正しい(とされている)方向に戻すだけではなく、自分の目指すべき方向に自在に操ることができることに気づくはずである。写真の色を操る試みはカラーフィルムが誕生した初期の段階から行われてきた。

LBフィルターは基本的には色温度補正用であるのに対して、もっと積極的に色を調整するための『CC(カラーコントロール)フィルター』というものがフジフィルム社やコダック社などから沢山の種類が発売されている。夕焼けの色をさらに強調したり、新緑の緑色をさらに鮮やかに再現するなど、その利用目的は限定されていない。すべては撮影者に委ねられている。

CCフィルターはポジフィルムだけでなくデジカメであっても有効であり、デジカメ撮影において日常的に利用すべきアイテムとも言える。数年前、筆者が当時勤めていた、ある商品写真を撮っているデジタルカメラ専用スタジオの同僚(元々は写真が専門分野ではない)が『デジカメではフィルターは必要ない。あとでパソコン上で効果をつければ一緒だから』と言っていた。それは誤解である。デジカメしか触ったことのない人が陥りがちな誤解である。

デジカメではホワイトバランス機能によって、LBフィルターのシミュレートはできる。しかし、CCフィルターなどの効果をシミュレートすることはできないし、シミュレートするような機能があっても厳密には同じではない。それ以外にも『PL(ポラライジング)フィルター』のように、光の反射を制御するようなことも不可能である。

創造的な写真撮影において、フィルターワークは切り離せないものである。それはフィルムでもデジカメでも変わらない。写真が例え『真実を写す』べきものであったとしても、フィルターを使ったからと言って真実でなくなるという意味合いもない。フィルムやデジカメの色再現のメカニズムや欠点を理解し、場面に応じて補正したり自分の意思で色をコントロールできるようになってこそ、よりオリジナリティあふれ、価値の高い作品を作り出すことができるのである。