[第1章-3] 絞りの役割

シャッター速度がレンズを通った光が感光材料に当たる時間であるのに対して、レンズを通る光の量を調節する機構が『絞り』だ。ビデオカメラでは英語のアイリスという用語を使うが、日本における写真用語としては『絞り』という表現を使う。

一般的な35mm一眼レフカメラの場合、絞りはレンズに内臓されている。絞りは5?10枚程度の黒い羽のようなもので構成され、撮影時に作動して不必要な光をさえぎる。絞りもシャッター速度と同じように、光の量を半分にしたり2倍にしたりすることを1段という単位で表現する。

レンズの焦点距離をレンズの口径(実際に光が通過する穴の直径)で割った値を『F値(えふち)』という。焦点距離50mmのレンズで絞りの口径が50mmであれば、F値は1となる。口径が25mmであればF値は2、という具合だ。F値は1を基準として、『F1、F1.4、F2、F2.8、F4、F5.6?』と並んでいく。

F1の次が2ではなく1.4なのは、レンズが四角形でなく円形であることに関係している。レンズを通る光の量はレンズの面積に比例する。実際にはF1.4は『√2=1.41421356』という値であるが、四捨五入して1.4と表現するこ とになっている。

F2.8からF1.4にすることは『(絞りを)開ける』と表現する。反対にF2.8からF5.6にすることは『絞る』という。レンズやカメラの機種によってはF2.8とF4の間などにも絞りがあって、それは中間絞りと呼ばれている。シャッター速度と同じく、1段の半分のことは1/2段や半段と表現し、「F4から1段開ける」というような言い方をする。そのレンズにおいて一番小さなF値にすることを『絞りを開放する』と言う。

一般的には最小F値が小さなレンズほど、高額で写り方(色合いや鮮明さなど)が綺麗なレンズであるとされており、そのようなレンズは古い物でも高額で取引されている場合がある。