[第1章-6] 適正露出について考える

『適正露出』とは、あえて乱暴な言い方をすれば、人間の目で見た明るさを写真で再現するために必要な量の光を感光材料に当てることを言う。光の量が足りなければ『アンダー(露出不足)』、多ければ『オーバー(露出過多)』となる。

露出不足だと青い空は紺色の空に写り、ピンクのコスモスは茶色っぽく濁って写ってしまう。露出過多の場合は、青い空は薄い水色に写ってしまい、ピンクのコスモスは色が真っ白に飛んでしまう。しかし、適正露出でなければ絶対に駄目なのかと言えば、そのようなことはない。多くのプロカメラマンは、女性の写真を撮るときに意図的にオーバー気味に撮る。その方が肌が透き通ったように綺麗に写るからだ。

経験豊富なカメラマンほど、自分の露出というものを持っている。沢山の試行錯誤を繰り返すことによって、『この場合は(適正露出より)半段オーバーしよう』とか『2段アンダーで撮ろう』など言った判断ができるのである。適正露出はカメラマン個人個人やその表現意図、目的などによって違う。一般的な写真の場合、適正露出に絶対的な正解は存在しない。

露出に関して寛大なネガフィルムとは違い、デジカメで記録されるデジタル画像は、オーバーで白飛びした部分やアンダーで黒く潰れてしまった部分は、階調が存在しない部分となる。Photoshop等の画像編集ソフトを使っても、階調が存在しない部分を復元することはできない。適正露出であることがベストではあるが、特にデジカメはオーバーに対しての耐性が低い機種が多いので、オーバーになるくらいなら、多少アンダー気味に撮った方が安全だろう。しかし、撮影に対してクリエイティブになることを恐れてはいけない。