第1章 基本を理解する
第2章 カラーを学ぶ
第3章 被写体とレンズ
第4章  選択する技術
第5章 ライティング入門
第6章  動画撮影入門
第7章  AF限界理論 撮影で困ったときは

デジカメで動画を撮る

現在、コンパクトデジカメはもちろん、プロ向けのデジタル一眼レフカメラに至るまで、デジカメでも動画撮影機能が付属するのが当たり前になった。それも機種によっては動画専用に開発されたビデオカメラ以上の品質で撮影できるようなものもあり、TVCMや映画の撮影にも使われるような場合もある。慣れ親しんだスチールカメラで動画が撮れるとあって、これまで写真にしか興味がなかったという人でも、手軽に動画の世界に足を踏み入れることができるようになった。

写真が基本的に1枚の静止した絵で全てを表現する世界なのに対して、動画は時間軸で表現する世界という違いはある。しかし、これまでの講座で撮影に対する姿勢や写真のメカニズムについて学んできた者にとって、動画の世界というのはそう敷居が高いものではないと思う。スチールカメラを学んだ者にしかない強みもあるはずである。この章では動画撮影入門として、ビデオカメラや映像の世界について紹介する。

ビデオカメラの種類

ビデオカメラは価格帯や用途別に次の3種類がある。

・放送用ビデオカメラ
主にTV局のスタジオで使用されており、数百万?数億円くらいの価格帯である。放送用ビデオカメラの場合、カメラマンはカメラの設定には関与せず、副調整室のビデオエンジニアがコンパネ(カメラコントロールパネルの通称)で行う。

・業務用ビデオカメラ
主に映像制作会社などがプロモーションビデオや結婚式の撮影などのビデオパッケージ(VP)の制作に使う。TV局でも取材などで使用する。放送用ビデオカメラに匹敵する画質と、"1機能1ボタン"など仕事道具としての使い勝手を重視している場合が多い。およそ20万円~数百万円程度で、スチールカメラと違い、業務用のため家電量販店では普通は置かれていない。都市部のプロショップや業界主催の展示会などで見ることができる。

・民生用ビデオカメラ
家電量販店等で一般向けに販売されているハンディカム等に代表される家庭用ビデオカメラ。自動設定で簡単に使えること、小型かつ軽量なことが特徴で、ごく一部の上位機種を除いては、シャッタースピード、アイリス(絞り)、ゲイン(感度。デジカメのISOに相当)をそれぞれマニュアルで調整することができない。最近では、使い勝手を別にすれば、画質面ではフルハイビジョンで撮影できるなどTV放送でも使えるくらいの画質のものもある。数万円~15万円程度の価格帯である。

旧来、上記のような分類であったが、ここにデジカメの動画機能が加わったような形となる。コンパクトデジカメであれば民生用ビデオカメラ相当、EOSムービーに代表されるデジタル一眼レフであれば業務用ビデオカメラ相当の画質である。しかし、元々が写真用に設計されていることもあって、音声記録や長時間撮影、他の映像機器とのコンビネーションなどに関しては、ビデオカメラと全く同じという状況にまでは至っていない。

デジカメとビデオカメラの画素数の違い

レンズを通した光がセンサーで読み取られて記録されるなど、デジカメとビデオカメラの基本部分は同じである。デジカメの場合は、写真を大きくプリントする場合があるため、現在は1000万画素以上のものが標準的である。だが、ビデオカメラはいわゆるフルハイビジョン(フルHD)といわれる、地上デジタル放送やブルーレイ等の昨今、一般的に高画質とされる規格でも、約200万画素程度である。それ以上で撮影できる機種や規格も、今後数年の間には一般的になると思われる。

フルHD規格が約200万画素なのに、それ以上の画素数を売りにするビデオカメラもあるが、それは大抵の場合は写真撮影機能のためであり、動画撮影には関係しない。デジカメが動画撮影を身に着けたのと同じで、ビデオカメラも写真撮影機能を身に着けているためである。かえって、写真用に高画素のセンサーを搭載したがために、動画撮影時にノイズが出やすいなどの弊害もあるため、キヤノンの一部のビデオカメラのように動画専用に割り切って約200万画素のセンサーを採用している機種もある。

スチールとムービー、用語の違い

デジカメもビデオカメラも同じく“撮影”をするための機器であるため、露出やホワイトバランスなどの考え方は基本的に同じである。一部に同じようでも細かな違いがあるので、代表的なものを下記に記述する。

・アイリス
スチールカメラでいう絞り。F2.8、F4、F5.6など表記方法などは同じである。解放のことはオープン、スチルカメラにはないが絞りを完全に閉じることをクローズという。

・シャッター速度
スチールカメラと基本的には同じで、速くすれば暗く、遅くすれば明るくなる。但し、一般的な動画は1秒間に30枚程度の静止画でせ構成されているので、1/30秒より遅くすることはしない(できない)。あまり速くしすぎると映像の動きの滑らかさがなくなり不自然になる場合があるので、1/30?1/100秒くらいの間で使う。蛍光灯下ではフリッカーと呼ばれるチラツキが映る場合があるので東日本では50Hzの倍の1/100、60Hz地域では1/60秒に設定しないとならないなど、スチルカメラより自由度は少ない。そのため、光量を抑えるNDフィルターが内蔵されてる場合がある。

・ゲイン
電気的に映像を明るくする機能。デジカメのISOに相当するが、ゲインはあくまで相対値である。ゲインを使用するとノイズが発生するため、なるべく使わないのが一般的。一部の機種には標準より暗くするマイナスゲインという設定もある。

・ゼブラパターン
デジカメには一般的にはないが、多くの業務用ビデオカメラにはゼブラパターンを表示する機能があり、この機能を使えばより正確に露出を決定することができる。ビデオカメラでは、画面上に映し出される映像の明るさをIREという尺度で表す。モニターで映し出せる最低の明るさ(黒)がIRE0%。一番明るい部分がIRE100%というように百分率で表す。ゼブラパターンをIRE100%警告にしておいて、被写体の上にゼブラがほとんど出ないように明るさを調節する。上級者でIRE70%警告を使うことも多い。IRE70%というのは、もっとも再現性がいい明るさであり、人の顔をこのあたりにしておくと美しく見える。

EOSムービーの弱み

下手な業務用ビデオカメラ以上の画質を誇り、TVCMや映画撮影でも使われる機会が増えているデジカメ動画(EOSムービー)だが、ビデオカメラと同等の使い勝手があるわけではなく、得意不得意がある。ズームやAFを生かした“TV的”な映像よりも、“映画的”な映像の方が得意である。下記に記載しているのは、この分野で代表的なCanon EOSシリーズの場合である。

100万円以下の業務用ビデオカメラより得意な場合が多いこと
・暗い場所でも低ノイズ
・浅い被写界深度を生かした絵作り
・レンズ交換による絵作りのバリエーション
・小型、軽量(EOS7D、Kissシリーズなど)

・100万円以下の業務用ビデオカメラより不得意な場合が多いこと
・絵柄により、写真用の高解像度センサー使用によるモアレ発生
・ある程度カスタマイズできるが、彩度やコントラストが高い(一般的に動画の世界ではデメリット)
・動画撮影中のAF、ズームは実用的ではない
・撮影現場で一般的な他の業務用映像機器との連携が考慮されてない

動画は編集して完成する

旅行などでビデオカメラを持ち出して大量に撮影してきたはいいものの、撮ったままほとんど見ることがないという人が多いという。

以前は動画を扱うには高価な特別仕様のPCが必要だったが、昔とは比較にならないほど高性能になった現在の一般的なPCであれば、動画編集はそんなに大きな負担のかかる作業ではない。せっかく撮った動画は編集して作品として仕上げる作業も、ぜひとも経験してみてほしい。

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