第1章 基本を理解する
第2章 カラーを学ぶ
第3章 被写体とレンズ
第4章  選択する技術
第5章 ライティング入門
第6章  動画撮影入門
第7章  AF限界理論 撮影で困ったときは

被写体と向き合う

カメラで撮る対象が風景であっても人物であっても、動物、植物、あるいは“単なる”壁や、“単なる”地面であったとしても、被写体と自分との間で一定の関係性を持ち、被写体を学び、理解し、自分の中で解釈しようとする努力など、被写体と向き合う姿勢こそが写真撮影では重要となる。

写真とは、現実の限りない世界を限られたサイズの平面で表現する手段とも言える。絵画と写真は似ている部分もあり、よく絵画を専門的に習ったことのある人は、初めて写真作品を撮ったとしても構図や絵作りの面において、一定以上の結果を得ることができるという。それは絵画も写真も、限られた平面で表現するという、ある種の制約条件の中での表現だからである。

被写体と徹底的に向き合う

第1章と第2章にて、絞りやシャッター速度、色に関しての基本について説明したが、それらは実撮影を繰り返していくうちに、ある程度のレベルまでは遅かれ早かれ身に付くはずである。その次の段階で重要となるのが被写体と向き合う姿勢についてである。撮影に出掛けた時、撮影する気がない時はカメラはバッグの奥にしまっていても構わない。

しかし、いざ『これだ』という被写体に出会った時、2~3秒以内に取り出してシャッターを切ることができるだろうか? 電池とフィルム(デジカメではメモリーカード)、その場所で使う可能性の高いレンズとフィルターを予めセットしておけば、例えバッグの中にいれておいても、取り出せばすぐに撮影することができる。バッグはカメラ専用のものである必要は全くないが、リュックサックだと取り出すのに時間がかかるため、ショルダーバッグタイプの方が有利である場合が多い。

スタジオでの商業撮影を除けば、予定調和の撮影というのは少ない。自分にとっていわゆるシャッターチャンスが訪れる可能性が高い場所にいる時は、利き手にストラップを手首に一周させた状態で常に手にした状態で持ち歩こう。ストラップを巻くのはブラブラしていると格好悪いというのと、力が緩んでカメラを地面に落とさないようにするためなどである。露出や撮影モードなどの設定はあらかじめしておき、電源を入れるだけですぐ撮影できるようにしておく。治安の悪い外国などではひったくりの可能性もあるので状況により使い分けるべきだが、良い被写体に出会った時にバッグから取り出すのに時間がかかっているようではチャンスを逃すことになる。

そして『これだ』という被写体に出会った時には、一度や二度のシャッターだけで撮影を終了してはいけない。絞りや露出を変えてみたり、背景とのバランスを変えてみたりと、時と場の状況が許す限り、様々なバリエーションで撮影してみるべきである。何が何でも“この被写体で作品を作る”という気持ちを撮影中は忘れてはならない。同時に“この被写体では作品を作らない”という中止選択も撮影には必要な場合がある。

時間帯を変えてみる

日中屋外での撮影であれば、それを照らすメインの照明機材は通常は太陽となる。太陽は時間帯によって方向と色温度、明るさが変化する。夏と冬では太陽の沈む位置も時間も違う。被写体にカメラ側から光が当たってる状態を『順光』と言う。ストロボを使わずに屋外で記念写真を撮る場合は順光であることが重要とされるが、それ以外の作品撮影では順光に拘る必要は全くない。順光で撮影をすると被写体全体に均一に光があたり、表面の様子が正確に描画される一方、写真表現としては平面的で退屈な仕上がりとなってしまいやすい。同様に正午頃の高い位置に太陽がある時も、平面的な仕上がりとなってしまう場合が多い。

撮影旅行に出かけた際には、ぜひ早朝や夕方を狙って撮影をしてみよう。低い位置から照らす太陽は、時に日中では見ることのできない、とても幻想的な景色を見せてくれる場合がある。

レンズ=カメラの目

レンズとは、カメラにとっての目である。大型量販店のカメラコーナーにいくと、何十種類もの交換用レンズが並んでいる。しかし、機材集めが趣味という人を別にすれば(それはそれで構わない趣味だが)、プロや作品撮りがメインの撮影者が何十種類ものレンズを持つ必要があるケースは稀で、2~5本程度あれば世の中に出回っている大抵の写真は撮影できる。

とある写真家は撮影に出かける時、カメラ1台と標準レンズ1本しか持っていかないと言う。フィルムの大型カメラの場合、撮影時にフィルムを一枚ずつセットするのだが、フィルムさえも2枚(うち1枚は予備)しか持っていかないという。かえって、写真に精通していない人ほど、沢山の機材を持っていこうとする傾向があるのではないだろうか。

カメラの種類により標準レンズの焦点距離は違うが、35mm一眼レフの場合は50mmが標準レンズとされている。ズームレンズの場合、28-80mm程度が標準ズームレンズとされている。これらのレンズが標準と呼ばれる理由は、その焦点距離で撮影した時の画角(写る範囲)が肉眼で見た時の視野に近いからである。どのメーカーのカメラでもこれらの焦点距離のレンズは必ず用意されており、望遠レンズや広角レンズなどに比べて、単焦点の標準レンズは低価格品でもF値が明るめでコンパクトかつ高画質な製品が多い。

2本目の購入に適したレンズ

最初に50mmのレンズを使っていたとして、2本目に揃えるべきレンズはどの焦点距離だろうか。よく撮る被写体にもよるが、風景やスナップ写真が多いなら24mmか28mmの単焦点をお勧めしたい。『28mmなら最初から標準ズームレンズを買ったほうが早いのでは?』と思うかもしれない。

だが、被写体に向き合う姿勢を学ぶ上で、最初に50mmの単焦点レンズを選択するメリットは大きい。カメラポジションやアングルを工夫したり、フットワークを機軸とした撮影技法を身につけるためには50mmが最適なのである。絞れば広角レンズ風に、開ければ望遠レンズのように背景をボカすことができるのが50mm単焦点レンズである。

古くから風景撮影や商品撮影で使われている大型カメラではズームレンズというものは存在せず、中型カメラでも単焦点レンズが一般的である。35mmカメラやデジタルカメラを使う場合でも、商品撮影専門のスタジオなどではレンズと言えば単焦点レンズを意味する場合もあるくらいで、品質を求める撮影ではレンズと言えば今も昔も単焦点なのである。

話は戻るが、広角側の焦点距離を使う必要を感じなければ、そのまま50mm一本でも構わないと思う。しかし、現実世界には50mmだけでは写せない写真というのも確かにある。そのような問題に直面した場合には、解決策として24mmや28mmを検討に入れれば良い。

風景よりも人物を撮る場合が多い場合は、85mmのレンズが候補に挙がる。人物を撮る場合、カメラマンと被写体との距離感が重要になるが、この85mmというのはポートレートレンズとも呼ばれており、距離感が丁度よいとされている。50mmよりも開放付近でのボケ方がより大きいものとなる。50mmで人物を撮影していて、近づいた時の『歪み』が気になるような場合も、85mmなどの焦点距離が長いレンズを検討すべきである。

小物や静物も撮る場合は、85mmの代わりに各社から発売されている90mmや100mmのマクロレンズを代用する方法もある。マクロレンズは被写体に数センチまで近づいて撮影できる接写用レンズだが、商品撮影や人物撮影などにも便利に使えるので、本来の接写撮影だけに留まらず利用範囲は幅広い。

“モノ”としてのマクロレンズ以外に、摂氏や撮影する技法としてテレマクロがある。単純なことで、最短撮影距離の短い望遠レンズや高倍率ズームレンズを使って、寄って取るのがテレマクロだ。コンパクトカメラでは構造的にテレマクロが可能なのが一般的なので、一眼レフカメラ用レンズでも、商業的理由でテレマクロが可能なレンズが昨今増えている。

そのレンズが持つ特性を知ろう

現在売られている入門用の一眼レフカメラのセットなどでは、大抵はズームレンズが付属してくる。しかし、ズームレンズにはいくつか欠点がある。人間の視野角を基本とした50mmでの撮影技術を身につけたうえで、自分の写真の方向性や好みの被写体などを考慮した上でズームレンズを導入するなら、何ら問題はない。狭い室内で動く人物を撮ったり、自然の中で動物を撮ったりする場合は、ズームレンズでの撮影が有利である。そのような場所では単焦点レンズははっきり言って向かない。プロでもスポーツ撮影や、過酷な条件下での撮影が常となる新聞社のカメラマン、結婚式や運動会などのスナップ写真を撮っているカメラマンにはズームレンズのニーズは高い。

しかし、時間的にも場所的にも、じっくり被写体と向き合うことができる条件なのに、自分が動かずに安易にズームに頼ることを目的するズームレンズ使用には賛成できない。そのような安易な考えでは、たとえ最高の被写体に出会えたとしても、他人を納得させられる作品はもちろん、自分自身すら納得できない、何の変哲もない写真しか撮れない可能性が高いように思える。ズームレンズは単焦点レンズと比較して、一部のプロ用高級レンズを除けば、逆光に弱く、F値も暗めで、ボケ方の描写が評価が一般に悪いことなどは、ズームレンズの短所として挙げておかなければならない。

レンズは被写体と向き合うための目である。焦点距離や描画の特徴など、そのレンズが持つ特性を十分に知り、その特性を生かして作品の撮影に望んでいくべきである。

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