第1章 基本を理解する
第2章 カラーを学ぶ
第3章 被写体とレンズ
第4章  選択する技術
第5章 ライティング入門
第6章  動画撮影入門
第7章  AF限界理論 撮影で困ったときは

カメラが進化しても変わらないものとは?

技術の進歩によって“誰でも使える”デジタルカメラが一般的になり、一昔前のマニュアル式フィルムカメラに比べ、ほとんど何も覚えたり考えたりする必要もなく、小さな電子ボタンを一つ押すだけで簡単に写真が撮れるようになった。

しかし、それでいいのだろうか? いつの時代にも「なぜ?」「どうして?」と言った疑問や知的好奇心が、人類の進歩を支えてきたと言っても過言ではない。写真を学問として研究する大学や専門学校は国内外にあるし、学問や芸術として捕らえても、人類にとって価値が高く、奥の深い存在が写真なのである。

この講座は“デジカメ講座”ではあるが、写真技術を学ぶ上ではフィルムカメラを知るのが経験的に最良であるため、フィルムカメラの話題も数多く登場する。第1章ではカメラ誕生の歴史を振り返り、写真が写るメカニズムや、写真をやっていくうえで避けて通れない基本用語について学んでいこう。

世界初のカメラは画家のアイデアから

光は電磁波の一種であり、物体にあたると跳ね返る性質がある。遠い昔の紀元前のころ、光の反射を利用して暗い部屋に外の景色を投影する装置が東部地中海地方に存在していたという。そのカメラ・オブスキュラと呼ばれる現代のカメラの元となった装置は、画家が風景を正確にスケッチするために利用されていた。

その装置は家の一部屋分にも相当する大きさであった。 19世紀に入ると、投影された像をスケッチするだけでなく、“固定させたい”と考える人たちが現れた。これが現代のカメラにも通じる重大な転換点である。やがて、光を感じ取る“感光材料”を使うというアイデアによって、世界初めての写真撮影が行われた。世界初の写真撮影は、まだ感光材料の感度がとても低く、8時間もの露光時間が必要だったという。

2015年現在、感光材料(≒フィルム)を使用して撮影しているのは、一部の愛好家と一部のプロ写真家など少数派になってしまったが、例え最新式のデジタルカメラであっても、カメラが生まれた当初の基本構造と比べて、根本的な変化というのはまだない。デジカメの場合、感光材料は電子部品であるセンサーに置き換えられたという違いがあるだけである。

シャッター速度を知る

写真の仕組みを知るための1つ目の重要なキーワードがシャッター速度である。シャッター速度とは感光材料に光が当たる時間を表す。感光材料はフィルムカメラであればフィルム、デジカメであればセンサーが該当する。カメラ機種によってシャッターの機械的構造は異なる。

一般的な一眼レフカメラでは、レンズと感光材料の間に開閉可能な幕のようなものがあり、普段は閉じており光が感光材料に届くことはないが、撮影の瞬間だけ幕が開き、感光材料を露光する。この幕が開いている時間の長さことをシャッター速度呼ぶ。英語ではSV(Shutter Value)やTV(Time Value)などと表記する。

わかりやすい例でいえば、感光材料に光を10秒間当てた場合と、20秒間当てた場合では、20秒間当てた方が2倍の明るさで写真が写る。最も、現代では感光材料の発達で、シャッター速度を10秒や20秒に設定する場合は、夜景撮影など特殊なケースに限られる。現実には1/500秒や1/250秒など人間の感覚からすると非常に早い速度がよく使われる。この場合でも1/250秒の方が2倍明るく写る。

写真用語では、この2倍や半分になる変化を1段という単位で表現する。1段の半分の変化を半段や1/2段、1段の1/3の変化は1/3段といい、プロの撮影現場などでも「半段明るくして!」などとよく使われる表現である。

プロ用の一眼レフカメラでは、シャッター速度は1/3段ごとに1/8000秒?30秒くらいの調節ができるようになっている機種が多く、アマチュア用でも同じくらい幅広い調整ができる機種もある。大まかに言えば、シャッター速度の調節単位が細かく、調整幅が広いということは、それだけ明るい場面でも暗い場面でも柔軟に対応できるカメラということを意味する。

シャッター速度は写真の明るさに影響するだけでなく、写真の絵作りにも影響する。例えば、動いているものを長いシャッター速度で撮った場合はその動きが記録され、短い場合は止まっているかのように写る。

手持ち撮影の場合、手振れ補正機能の有無などにもよるが、レンズの焦点距離の数字以下(100mmのレンズなら1/100より遅い場合ということ)のシャッター速度で撮影すると手振れが発生する可能性がとても高くなる。その場合は三脚の使用を考えるか、下記記載の絞りやISO感度の判断ミスの可能性があるので考え直した方が良い。

絞りの役割

シャッター速度がレンズを通った光が感光材料に当たる時間であるのに対して、レンズを通る光の量を調節する機構が『絞り』だ。ビデオカメラでは英語のアイリスという用語を使うが、日本における写真用語としては『絞り』という表現を使う。

一般的な35mm一眼レフカメラの場合、絞りはレンズに内臓されている。絞りは5?10枚程度の黒い羽のようなもので構成され、撮影時に作動して不必要な光をさえぎる。絞りもシャッター速度と同じように、光の量を半分にしたり2倍にしたりすることを1段という単位で表現する。

レンズの焦点距離をレンズの口径(実際に光が通過する穴の直径)で割った値を『F値(えふち)』という。焦点距離50mmのレンズで絞りの口径が50mmであれば、F値は1となる。口径が25mmであればF値は2、という具合だ。F値は1を基準として、『F1、F1.4、F2、F2.8、F4、F5.6?』と並んでいく。

F1の次が2ではなく1.4なのは、レンズが四角形でなく円形であることに関係している。レンズを通る光の量はレンズの面積に比例する。実際にはF1.4は『√2=1.41421356』という値であるが、四捨五入して1.4と表現するこ とになっている。

F2.8からF1.4にすることは『(絞りを)開ける』と表現する。反対にF2.8からF5.6にすることは『絞る』という。レンズやカメラの機種によってはF2.8とF4の間などにも絞りがあって、それは中間絞りと呼ばれている。シャッター速度と同じく、1段の半分のことは1/2段や半段と表現し、「F4から1段開ける」というような言い方をする。そのレンズにおいて一番小さなF値にすることを『絞りを開放する』と言う。

一般的には最小F値が小さなレンズほど、高額で写り方(色合いや鮮明さなど)が綺麗なレンズであるとされており、そのようなレンズは古い物でも高額で取引されている場合がある。

被写界深度のコントロール

絞りの調節は明るさの調節だけでなく、ピントの合う範囲(被写界深度)を調節するという意味合いもある。旅行先で記念写真を取るような場合、人物と背景の景色の両方にピントを合わせるには、距離関係などにもよるが、絞りをF11からF22くらいまで絞り込む必要がある。

人間の目で例えれば、近視の人が遠くの文字を読むときに目を細めて読もうといるのに似ている。絞りを絞り込むことによって、手前から奥までピントを合わせることができるのである。反対に、絞りを開放付近にすることによって、ピントの合う範囲を狭めることができる。

女性のグラビア写真などで女性にだけピントが合っていて、背景がボケているような写真は多くの場合、開放付近で撮られている。被写界深度を理解することは、写真作品の表現において非常に重要である。

シャッター速度と絞りを組み合わせる

一般的に、カメラは人間の目ほどは優秀にできていない。人間の目は暗い場所では瞳孔を開いて明るく見ようとするし、脳での補完も手伝って、地球上のほとんどの場所で『適正な明るさ』で物を見ることができる。

カメラを使い『適正な明るさ』の写真を撮るには、シャッター速度と絞りを適正に調節しなければならない。フィルム時代初期のカメラやマニュアル式カメラでは、撮影者が経験や知識によって予測し、それらを自己決定して撮影していたが、現在のカメラでは被写体の明るさを測定して、自動的に最適と思われるシャッター速度と絞りを導き出す機能が内臓されている。

測定方法については、カメラが商業製品として広く普及させるための重要課題として、いかに人間の目に近づけることができるか、カメラメーカー各社が競って開発してきた。その結果、様々な測定方式が生まれ、画面の中央部分を重視して測定する方法や、画面内を何十箇所というブロックに分割した上で、さらに色や奥行きまでを考慮して測定するようなハイテク方式も開発された。

適正露出について考える

『適正露出』とは、あえて乱暴な言い方をすれば、人間の目で見た明るさを写真で再現するために必要な量の光を感光材料に当てることを言う。光の量が足りなければ『アンダー(露出不足)』、多ければ『オーバー(露出過多)』となる。

露出不足だと青い空は紺色の空に写り、ピンクのコスモスは茶色っぽく濁って写ってしまう。露出過多の場合は、青い空は薄い水色に写ってしまい、ピンクのコスモスは色が真っ白に飛んでしまう。しかし、適正露出でなければ絶対に駄目なのかと言えば、そのようなことはない。多くのプロカメラマンは、女性の写真を撮るときに意図的にオーバー気味に撮る。その方が肌が透き通ったように綺麗に写るからだ。

経験豊富なカメラマンほど、自分の露出というものを持っている。沢山の試行錯誤を繰り返すことによって、『この場合は(適正露出より)半段オーバーしよう』とか『2段アンダーで撮ろう』など言った判断ができるのである。適正露出はカメラマン個人個人やその表現意図、目的などによって違う。一般的な写真の場合、適正露出に絶対的な正解は存在しない。

露出に関して寛大なネガフィルムとは違い、デジカメで記録されるデジタル画像は、オーバーで白飛びした部分やアンダーで黒く潰れてしまった部分は、階調が存在しない部分となる。Photoshop等の画像編集ソフトを使っても、階調が存在しない部分を復元することはできない。適正露出であることがベストではあるが、特にデジカメはオーバーに対しての耐性が低い機種が多いので、オーバーになるくらいなら、多少アンダー気味に撮った方が安全だろう。しかし、撮影に対してクリエイティブになることを恐れてはいけない。

ISO感度とは

ここまでシャッター速度と絞りについて学んできたが、感光材料自体の感光特性を表すのがISO(イソ、アイエスオー)感度だ。現在売られている一般的なフィルムは1段ごとに、ISO100、ISO200、ISO400、ISO800などで、デジタルカメラでもセンサーの感度をそれ相当に設定できるようになっている。数字が大きいほど『感度が高い』と表現し、感度が高い場合の方が同じシャッター速度や絞りであっても、より明るく写る。ISO100とISO200の間には1段分の差がある。シャッター速度や絞りと同じ考え方である。

ISO1600やそれ以上のフィルムも存在するが、一般的にはISO感度は低いほど繊細で滑らかな撮影結果が得られる。ポジフィルムではISO100、ネガフィルムではISO400などを選択するのが商品ラインナップ的にも一般的だ。ポジフィルムやモノクロフィルムでは現像時にフィルム設計上のISO感度に対して、増感や減感をすることもできる。

デジタルカメラでは撮影ごとにISO感度を変更することができるが、基本的には感度は上げれば上げるほどノイズが目立つようになる。しかし、2015年現在のデジタル一眼レフカメラであれば、ISO400もしくは800くらいまでは目立った画質低下はない。一般的な撮影では十分とも言えるだろう。それでも、手振れしない程度の十分なシャッター速度と表現意図に適したF値が確保できるのならば、ISO感度はできるだけ低い値を選択するのが画質的に有利なことは言うまでもない。

なお、ビデオカメラではISOに相当するものはゲインというが、デジカメのISOはフィルム時代と同じく絶対値であるのに対して、ゲインは相対値である。

カメラ本体の選び方

写真を自分の意図した通りに撮影するには、カメラやレンズのメカニズム、露出の仕組みについて理解することが重要である。現在売られているデジタルカメラのほぼ全ての機種では、ピント合わせはもちろん、露出や色などの写真全般に関わる調節を自動で行ってくれるようになっている。

一眼レフタイプでは全てを手動に切り替えたり、コンパクトタイプでも部分的に手動にすることもできるが、入門クラスのコンパクトタイプや極端な低価格機種ではオート撮影しかできないものもある。2011年現在ではすっかりデジカメ全盛の時代とも言えるが、写真を深く学ぼうとする者や、写真の本質を楽しみたいとする場合には、フィルムカメラを選択することもお勧めできると言える。

これから始めるという方におすすめしたいのは35mm一眼レフカメラと呼ばれている機種だ。プロや作品撮りをしているアマチュアの間でも、最も一般的なカメラである。フィルムカメラは大まかにわけて35mmコンパクトカメラ、35mm一眼レフカメラ、中判カメラ、大判カメラなどがあるが、将来的にデジタル一眼レフカメラに移行する場合でも、操作の応用が利くのと、同じメーカーであればレンズの共用ができることを考えると、35mm一眼レフカメラを選ぶ利点は数多い。価格的には中古であれば数千円代からあり、かつてプロカメラマン向けに発売されていた上位機種でも2~3万円程度で買える場合もある。

レンズを選ぶ

カメラがレンズとフィルムを固定しておく『箱』だと考えれば、レンズは写真の描画を決める絵筆のようなものだ。予算に応じて、できる限り良質のレンズを選びたい。レンズは大きく分けて焦点距離を変化させられるズームレンズと、焦点距離が固定された単焦点レンズがある。

一見、ズームレンズの方が便利なように感じるかもしれないが、特に低価格帯のものは描写も鮮明とは言いがたい製品が多く、F値も暗めに設計されている。『作品』を撮ろうとする場合には様々な不満が生まれやすい。

対して、単焦点レンズの場合は設計に無理がないため描写は鮮明かつコンパクトで扱いやすいのが特徴だ。50mm前後の短焦点レンズは『標準レンズ』と呼ばれ、F値も明るく設計されている場合が多く、使いこなせば1本で人物から風景まで撮影できる優れものである。35mm一眼レフ用のズームレンズでは、28-80mm程度の物が標準ズームレンズと呼ばれる。

フィルムを選ぶ

写真用フィルムには、ポジフィルム、ネガフィルム、モノクロフィルムがある。デジタルカメラの普及でいくつかのメーカーはすでにフィルム販売から撤退してしまったが、フジフィルム社やコダック社のフィルムなら、近所のカメラ用品店でも容易に手に入れることができるだろう。

ポジフィルムはスライドフィルムとも呼ばれ、撮影して現像すればそのまま肉眼でも正しい色のついた像を見ることができる。もちろんプリントすることもできるし、フィルムスキャナーを使えばパソコンに取り込むこともできる。露出など撮影技術に対してシビアではあるが、カメラマンの意図したように撮ることができるのが利点で、プロはもちろん、作品撮りをするアマチュアなどでもよく使われている。これから写真を勉強していくという場合には、最もおすすめできるフィルムである。

ネガフィルムは『写るんです』にも使われている、露出や色に対しての柔軟さがあるフィルムだ。現像しただけでは茶色っぽい像しか見ることはできず、プリントすることを前提としている。ポジフィルムのように撮影者が厳密に仕上がりをコントロールすることは難しいが、プロの間でも結婚式場のカメラマンなど、失敗ができない場面や一回しか撮影がないような場面では、あえてネガフィルムが選ばれる場合もある。

使い方次第では便利なフィルムではあるが、色など画質面ではポジフィルムに一歩譲る部分もあり、写真撮影を学んで自分の作品を撮ろうという場合には使いづらい場合が多い。なぜなら、普通はネガフィルムのプリントは写真店に任せることになるが、多くの場合、撮影者の露出意図、カラーコントロールなどが正確に反映されることがないからだ。しかし、スーパーなどに入っているミニラボの一部や、プロ向けのプロラボではプリントに対して色味等の注文をすることができる。一般的に料金は後者の方が高いが、より細かく注文ができる。

最後に説明するモノクロフィルムは、一般的にはモノクロ・ネガフィルムを指す。自宅に暗室を作れば現像用の機材、薬品類などか必要になるが自分で現像?プリント作業を行うこともできる。フィルムで撮影している写真教室や、大都市に限るが一般向けに貸し出ししている暗室も一部にはある。

同じ写真という世界でも、モノクロ写真はそれだけで何冊も解説本や写真集出ているほどに奥が深い分野でもある。白~黒の濃淡だけで表現されたモノクロ写真は、写真表現の原点とも言える。せっかく写真の世界に足を踏み入れようとするならば、ぜひ一度は、失敗しながらでも挑戦してみるべきである。

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