機材選びから始まって、被写体を選ぶこと、露出、構図などの表現方法を選ぶことなど、写真を撮ることは選択の連続とも言える。機材選びだけを考えてもフィルムカメラなのかデジカメなのか、メーカー、具体的な機種、レンズとの組み合わせなど、中古~現行機種まで含めると、その組み合わせは無限に近い。
無限に近い選択肢の中から、その時の表現に必要な組み合わせを決定することから写真撮影は始まる。場合によっては、消去法的な選択方法になってしまうこともあり得るし、様々な事情により、本来沢山あるはずの選択肢が一つや二つに限られてしまう場合もある。
35mmフィルムの場合、最もよく使われるのは24枚撮りか36枚撮りのフィルムである。35mmフィルムカメラでは、一度カメラにフィルムをセットすると、そのフィルムは全コマ取り終えるまで、基本的には取り出したし交換したりできない。個人的には、撮影プランの都合上で撮影中にフィルムを交換する必要が出たときに、途中で強引に巻き戻して撮影したコマ数をメモしておき、あとで再度セットして空シャッターを切り、撮影中のコマから再撮影するという方法を使ったことはあるが、基本的には非公式な使い方となってしまう。普通の撮影者であれば、基本的にはその場面での表現に必要となるフィルム、予定カット数などを計算したうえで、予め必要なフィルムをセットすることになる。24枚撮りと36枚撮りのどちらにするかは個人の好みで構わないが、36枚撮りの方が1カットあたりのコストは安い。
ポジフィルムで撮影した場合、スリーブ指定で現像に出すと6カット程度ずつにフィルムが切断された状態で透明なスリーブ袋に入れられて戻ってくる。現像後のポジフィルムは、ライトボックス越しに肉眼で像を見ることができる。写真店には大型のライトボックスが用意されている場合も多いので、撮影した時の記憶が鮮明なうちに、現像が上がってきたと同時にその場でカットを選ぶ作業をするのがお勧めである。
スリーブ袋に入った状態で赤のダーマトグラフ(写真用色鉛筆)を使い、良いカットには○、明らかなピントずれや手ぶれ、露出の失敗したカットには躊躇なく×をつけよう。選ぶ作業を急ぐ場合や、1コマずつマウントして保存したい場合には、必要ないカットは躊躇なくハサミで刻んで捨ててしまおう。写真に慣れていないうちは、あえて失敗したカットも保存しておいて、同じ失敗をしないための学習に役立てるのもよい。
36枚撮影した場合、良いカットとして残すのはせいぜい3~5カットくらいになるのが一般的だと思う。ポジフィルムの場合は露出がシビアなので、1シーンにつき露出の前後を撮って3カット程度。ピントの前後を撮ったり、多少アングルを変えたりした場合を考えて、1本のフィルムでせいぜい4?6シーンくらい撮れれば平均的である。もっとも、すべてのシーンで予備を撮る必要がない場合も多いが、現場では良いと思ったが写真にするとダメなカットや、人物撮影であれば“捨てシャッター”の場合もあるので、36枚撮りフィルムでも、OKカットはその程度なのである
商業雑誌の表紙の撮影などでは、500カット撮影したとしても最終的に使われるのは最良の1カットだけである。残りの499枚は使われず、世に出ることなく消える。一流や一流に近いプロであっても、そういう割合なのである。入門者であればもっと割合が低くなってしまうかもしれない。特に写真を勉強し始めたころは、自分の撮った写真が実際以上に良く見えてしまう傾向があるため、この“捨てる”という選択は難しいかもしれないが、しかし、一歩でも先に進むためには、撮影した写真を捨てるという作業は避けて通れない。
35mmポジフィルムの場合、○のチェックをしたカットだけをハサミで切り取り、マウントに固定しよう。マウントはスライド用品として売られているが、ただ単に保存するための道具として使っても構わない。紙製の方が安価だが、プラスチック製の物であれば、あとで中身を入れ替えたりできて便利である。マウントに入れたフィルムは、マウント用の専用バインダーに閉じて、湿気の少ない場所に保存する。防湿庫の購入する方法もある。
ある程度の枚数が溜まってきたら、自然、街、人、花などとカテゴリー別に分けると、後で取り出すときに便利である。年代別に別けたり、撮影場所ごとに別ける方法もあるが、基本的に写真作品というのは、1枚で全てが完結していると考えるのが理想である。そのため、カテゴリー別に別けた方が良いと考えている。年代別や場所ごとで別けると、組写真的な考え方になってしまう。
ネガフィルムの場合は、1コマごとに切り離されているとプリントを受け付けて貰えない場合があるので、切り離さずにネガ袋に入れたまま保存したほうがよい。
ここまでの話はフィルム時代の話である。デジカメしか使ったことがないカメラマンにも、いかにフィルム時代のカメラマンがシャッターを切るという行為に対して神経を使っていたか、想像して貰えたばすだ。
フィルムの場合は撮影すればするほどコストがかかるので、初心者でも撮影枚数は控えめになり、よほど資金に余裕のある人以外は、必然的に撮る段階から選ぶことを学んでいくことになる。しかし、デジカメで写真を初めた入門者は、文字通り、撮影枚数に歯止めが利かない人が多い。
1990年代、一般向けのデジカメはまだオモチャ扱いで、プロ向けのデジカメも100万円以上するのが当たり前であった。2000年に入り、初めて30万円代の低価格のプロ向けデジタル一眼レフカメラとしてCanonから『D30』というカメラが発売された。
今では考えられないが、当時、まだメモリーカードは高価で128MBのカードでさえ2万円近くもしていた。しかし、D30で撮影した1カットあたりの容量が1MB程度であったことを考えると、カード1枚で128カット程度も撮影することができたのである。しかも、失敗したカットはその場で削除して撮影枚数を増やすこともできる。24枚や36枚撮りフィルムで、撮影時から取捨選択することを習慣的に行ってきた人間には、カード1枚でフィルム4~6本以上にも相当する“大容量”であった。
昨今、メモリーカードの大容量化と低価格化で、入門者でも数GBのメモリーカードをデジカメ購入と同時に買う者がほとんどだと思う。つい最近も、夜空の星を手持ちで撮影しようとしていた入門者らしき撮影者が、同伴している者に『千枚くらい撮れるから、沢山撮ればどれか1枚はちゃんと写ってると思うよ』と話していた。しかし、残念ながら千枚撮ろうと一万枚撮ろうと、最新の手ぶれ補正機能があっても手持ちでは夜空の星を綺麗に撮影することはできないであろう。重量のある三脚を使って数十秒から数分間もカメラを固定し、地球の自転に対応させるための専用機材が必要なのである。また、星空というのは“街中”では鮮明に撮影することもできない。人家すらない、山奥でなければならないのだ。
このような状況の昨今、数GBのメモリーカード数百円で売ってるのに、わざわざ容量のメモリーカードを買うべきだとも言えない。しかし、フィルムと違いメモリーカードというのは電子部品であり、ちょっとした静電気や機器の不調等により、一瞬で苦労して撮影した、撮り直しのできない写真データが消えてしまうケースが意外と頻繁にあることを付け加えたい。大容量のカードを一枚買うよりは、低容量のカードを複数枚持って使い分けるほうがデータ損失のリスクは低いのである。
基本的に選ぶ作業や捨てる作業というのは、場合によっては撮影よりも神経と時間を使う。デジカメで何百枚~何千枚撮影できるとしても、撮影時から“捨てる”ことも考えておくべきである。
デジカメでもフィルム同様、不要なカットはどんどん捨てていくのが基本である。パソコンに取り込んでから、ビューワーソフトなどで大き目のサムネイル表示などにして、キーボード操作でどんどん消していく。但し、写真というのは歴史的な価値が後で出てきたり、しばらく“寝かして”おいた方が良い場合もあるので、捨てるものと捨てないもののバランスも重要である。
デジタルデータはフィルム以上にデータ消失のリスクは高い。フィルムであれば、撮影した像は物理的に残っているので、巻き取り前に裏蓋を開けてしまうなどの大きなミスがない限りは、滅多なことで写真が完全に消失するということはない。デジカメのデータは簡単に削除できるせいで、消失意外にも自分の誤操作や、判断ミスにより削除してしまうこともある。しばらくして、削除した本人がそれに気づくことになる。
しかし、デジタルデータの場合はどうだろうか。粗悪なメモリーカードやデジカメの不調により、撮影中に急にデータの読み書きができなくなったり、静電気などわずかなショックで全データが消えてしまうリスクがある。パソコンのハードディスクに取り込んでからでも、ハード、ソフトの不都合、人為的ミスでのデータ消失のリスクは常に高いと考えるべきである。
CD-RやDVD等へのバックアップは当然するべきであるが、ドライブやディスクの品質などによっては、ほんの数ヶ月で読めなくなる場合もある。そのため、重要なデータは半年おきくらいにバックアップを取り直すことが場合によっては必要になる。物理的に別なハードディスクにバックアップを取るのはお勧めできる方法の一つではあるが、ハードディスクも寿命がある消耗品であることも忘れてはならない。“取り外して保存しておけば大丈夫”と思っていても、長期間保存してあとに、いざ必要になって繋いでみても故障していて読みだせないようなケースもある。
もし、個人で万全に近いバックアップをするとしたら、1つ目に稼働中の物理的に別なハードディスク、2つ目として稼働させずに保存する物理的なハートディスク、3つ目としてCD-RまたはDVD-Rなどのメディア、4つ目としては外部のネットワーク上のストレージサーバーなどにバックアップするのが良い。
大げさに聞こえるかもしれないが、バックアップしたはずにも関わらず、海外撮影の貴重な写真データを不可抗力で損失させてしまった経験のある人間としての意見である。システム運用の考え方から言っても、データを1つの厳重な場所に保存しておくよりも、多少信頼性が低かったとしても複数箇所にバックアップを取っておくことのほうが、そのデータが失われるリスクは格段に低くなる。