ここまでの話はフィルム時代の話である。デジカメしか使ったことがないカメラマンにも、いかにフィルム時代のカメラマンがシャッターを切るという行為に対して神経を使っていたか、想像して貰えたばすだ。
フィルムの場合は撮影すればするほどコストがかかるので、初心者でも撮影枚数は控えめになり、よほど資金に余裕のある人以外は、必然的に撮る段階から選ぶことを学んでいくことになる。しかし、デジカメで写真を初めた入門者は、文字通り、撮影枚数に歯止めが利かない人が多い。
1990年代、一般向けのデジカメはまだオモチャ扱いで、プロ向けのデジカメも100万円以上するのが当たり前であった。2000年に入り、初めて30万円代の低価格のプロ向けデジタル一眼レフカメラとしてCanonから『D30』というカメラが発売された。
今では考えられないが、当時、まだメモリーカードは高価で128MBのカードでさえ2万円近くもしていた。しかし、D30で撮影した1カットあたりの容量が1MB程度であったことを考えると、カード1枚で128カット程度も撮影することができたのである。しかも、失敗したカットはその場で削除して撮影枚数を増やすこともできる。24枚や36枚撮りフィルムで、撮影時から取捨選択することを習慣的に行ってきた人間には、カード1枚でフィルム4~6本以上にも相当する“大容量”であった。
昨今、メモリーカードの大容量化と低価格化で、入門者でも数GBのメモリーカードをデジカメ購入と同時に買う者がほとんどだと思う。つい最近も、夜空の星を手持ちで撮影しようとしていた入門者らしき撮影者が、同伴している者に『千枚くらい撮れるから、沢山撮ればどれか1枚はちゃんと写ってると思うよ』と話していた。しかし、残念ながら千枚撮ろうと一万枚撮ろうと、最新の手ぶれ補正機能があっても手持ちでは夜空の星を綺麗に撮影することはできないであろう。重量のある三脚を使って数十秒から数分間もカメラを固定し、地球の自転に対応させるための専用機材が必要なのである。また、星空というのは“街中”では鮮明に撮影することもできない。人家すらない、山奥でなければならないのだ。
このような状況の昨今、数GBのメモリーカード数百円で売ってるのに、わざわざ容量のメモリーカードを買うべきだとも言えない。しかし、フィルムと違いメモリーカードというのは電子部品であり、ちょっとした静電気や機器の不調等により、一瞬で苦労して撮影した、撮り直しのできない写真データが消えてしまうケースが意外と頻繁にあることを付け加えたい。大容量のカードを一枚買うよりは、低容量のカードを複数枚持って使い分けるほうがデータ損失のリスクは低いのである。
基本的に選ぶ作業や捨てる作業というのは、場合によっては撮影よりも神経と時間を使う。デジカメで何百枚~何千枚撮影できるとしても、撮影時から“捨てる”ことも考えておくべきである。