現在普及している主要なデジタル一眼レフカメラには、主に2つのオートフォーカス(AF)方式が搭載されている。フィルム時代の方式を継承した位相差AFと、デジカメ向けのコントラストAFだ。実撮影で2つのAFを使い分けることは非常に重要だが、なぜだか説明書や入門書では深く解説されていることは少ない。
位相差AFはフィルム時代から使われている、古典的かつ現役の主流なAF方式だ。初期設定では、ファインダーでAFを使った場合に使用される。この方式は、人間が左右の目を使って物の立体感や、“おおよその距離感”を把握しているのと同じような原理でピントを合わせている。
『3mくらい向こうにテーブルがある』とか『50cmくらい向こうにコップがある』などと人間が予想できるのは、人生経験による部分もあるが、基本的には目が二つあるからだ。一眼レフカメラでは、ミラーボックスの中に位相差AF用のセンサーを埋め込んで、この被写体までの距離を把握している。
カメラ経験が長い人でも誤解している場合が多いが、位相差AFの精度や速度は、ボディ側の特性で決まるわけではない。ボディとレンズは、パソコンの周辺機器などと同じように、常に互いに通信している。
カメラメーカーのマーケティングの都合で、誤解されるような商品紹介をしているからでもあるが、実際にはAFに関わる性能はレンズによる部分が大きい。位相差AFはレンズ側のソフトウェアに左右される。どんなに優秀なボディであっても、ソフトウェアの作りが悪い限りは、ピントを正確には合わせられない。
某レンズメーカーでは、既定のテスト回数のうち、一定範囲内のピント誤差であれば、製品として市場に出回る。それぞれのフォーカスポイントや、ボディの世代によりピントデータが違うため、膨大な量のテスト撮影が必要となる。当然、無限に開発期間があるわけではないので、完璧な状態にまで作り込まれることはない。被写体や被写体距離、焦点距離、絞りなどにもよるが、位相差AFを使って正確にピントが合うのは10%~20%くらいではないかと思われる。
なお、最近の一部機種では、ボディ側でレンズごとに位相差AFのピントデータ調節ができる。この機能は上記事情に対処するために用意されている。『ちゃんとやってるのにピントが合わない』のは、故障しているわけでもなければ、腕が悪いわけでもない。位相差AFでは一般的なことなので安心して欲しい。逆光など条件が悪くなると、さらにピント精度は下がる。
位相差AFのメリットとしては、一般的にコントラストAFよりも合焦スピードが速いことだ。スポーツ撮影などで、ピント精度よりもスピードを優先したい場合や、日中の屋外でファインダー撮影がしたい場合に向く。キヤノンの場合、ライブビュー使用時でも『クイックAF』を使うように設定することで、AF時に映像が一瞬途切れるものの位相差AFを使用することもできる。